SUGI
“好き”だから本気になれる。仲間や先輩の背中を追いかけ常に進化し続ける注目のドローイングアーティスト、SUGI。
街を歩いていてもスマホの画面の中にも、かっこいいと思える大人や同世代の仲間と出会う瞬間がある。
一体どうして彼らがかっこよく見えるかって?
きっとその答えはたくさんあるだろうけど、もしかしたらその一つにどんなことにも素直に真剣に、本気で取り組む彼らの姿勢が関係しているのかも。
いや、もしかしたらそれは、自分の”好き”なことだからこそ本気で向き合うことができるのかもしれない。
姿勢より結果ばかりが注目されてしまう時代の中で、自らの目標に向かって突き進む人はかっこいい。
そんな自分の”好き”を無我夢中で追いかける人の取り組みの姿勢に、好きを見つけたり新たな一歩を踏み出すためのヒントを学んでみたいと思う。
自由で大胆な描写、日常の風景からライブペインティングと、ジャンルを問わず各方面から注目を集めるドローイングアーティストのSUGI。
KYANDYTOWNのメンバーの活動や生き方すらをも真似をしたくなるような先輩との出会いから刺激を受け、自身の表現の幅を広げ続けるSUGI。彼のアーティストとしての原点から”好き”を仕事にすると決めた時の葛藤、そしてこれから先の彼の目標を聞いてみた。
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【Profile】
Drawing Artist / SUGI
1990年三重県生まれ。ドローイングアーティスト
これまでにG-SHOCKやRenault(ルノー)の広告、MASATO,Minnesotah(KANDYTOWN)、MARTER(JAZZY SPORT)、illmore(Chilly Source)のジャケット、アパレルとのコラボレーションにライブペイントなど枠に囚われない様々なアート表現を展開。その自由・大胆かつ詩的な描写が脳を駆け巡るイラストレーションは、若者を中心に老若男女、ジャンル問わず各方面から注目を集めるアーティスト。
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ーアーティスト活動を始めようと思ったきっかけを教えてください。
音楽をやってる友達が多くて、自分も何かをしてみんなと一緒に遊びたいなと思っていました。昔から絵を書くことが好きだったのでデザインなりなんなりで何かしたいと思ったのがきっかけです。本当は大学に入って就職しようとしたんですけどなかなか決まらず。それもずっと遊んでいたから決まらなかったんですけど(笑)。なんか普通の仕事にはつけないなと思ったし、ふわっと人と違うことしようと思っていました。別にその時は絵描きになろうとは思ってはいませんでした。多分活動をスタートしたのが大学4年生くらいなので今でもう7~8年目くらいです。アーティスト名をSUGIにしてからは5年くらいですね。
ーなるほど。ちなみ肩書きのドローイングアーティストって初めて聞いた肩書きなんですが、ドローイングアーティストとは何か教えてください。
実際1年前までは僕もイラストレーターを名乗っていました。絵描きの肩書きの中にも種類がいっぱいあって、色々なイベントに出る時とか雑誌の取材の時に肩書きみたいなものを出さなきゃいけないんですけど、イラストレーターはクライアントさんの思考を入れながら自分の表現をちょっと抑えつつやらせてもらう感じがあって、アーティストだともちろん要望もあるんですけどざっくり自分の作風とか色を出せるというところがあるんです。肩書きってめちゃめちゃめんどくさくて多分いろんな方が経験されていると思うんですけど、僕は色々やるし結構ふわっとドローイングってつけてるくらいです(笑)。
ーそうなんですね。勉強になりました(笑)。ちなみにもともと絵を描くことが好きだったんですか。
子供の頃から自分で絵を描く時間が多かったです。それでいうと漫画を買ってストーリー自体はほとんど読まずに絵だけをみていたり、その漫画を塗り絵にしていました。ドラゴンボールとかだったら自分流にアレンジしてみたりして遊んでいました。
大学生の頃とかはスケボーをずっとしていたこともあって、グラフィティーアーティストさんとかストリートアーティストさんとかイラストレーターさんの無料で行けるような展示会に行って、それをずっと見てかっこいいいなと思っていました。
ー様々なアーティストのCDジャケットや広告といった色々なお仕事をされる中で、大切にしていることはありますか。
どんどん活動を広げるにつれて作品の色がSUGIじゃないって言われ出して、これだったら他の人にも頼めるよってことに気づくようになりました。アーティストとして呼んでくださったのに全然それに答えられなかったものが紙面に掲載されてしまったことがあって、それを今では後悔しています。それからはトライアンドエラーではないですけど、自分はこれなんだよって作風を大事に描くように心がけています。
ーSUGIさんが思うご自身の作風について教えてください。
本当に好きにやるというか、自分が見てきたものだったり感じてきたものを芯を通して説明できたらいいのかなと思っています。何をやっても自分の作品だと説明できる力がいるのかなと。見た目で僕の作品だってわかってもいいんですけど、僕的には何を作品として出してもその背景を説明できればいいのかなと思います。
ーなるほど、SUGIさんが絵を通して表現したいことはなんですか。
自分の生活シーンの中で楽しいと思ったことや綺麗だなと思ったことを僕なりに解釈して、繋げて、表現して「どうでしょう」って感じなんです。
それで多くの人に作品を観てもらって楽しんでもらえたらというか、その人が作品に対して思ったことを一緒にお話しできたら楽しいのかなと思います。僕も発信はするけれどそれを受け取った人がそこから何を感じてくれるのかということが大切だと思うので、受け手次第というか、本当に人ありきだと思っています。
ー素敵ですね。作品を通して会話が生まれたり新しい発見があったりするのでしょうか。
作品を展示している現場に行って実際に絵を観に来てくれた方と話す中で、実際に僕も新しい発見をできるというか。結局はやっぱり人に見てもらって、どう人が見ているかということを話すのが楽しいですね。
ーありがとうございます。次に「好き」を仕事にすることに対するSUGIさんの考えを教えてください。
何をやってもいいのかなって、とりあえず入り口はなんでもいいのかなと思っています。本当に好きだったらずっとやっているし、就職して働いていても本当に嫌だったらやめて自分の好きな道に入っていけるし、結局帰ってくるところが好きなことになればいいなと思いますね。
実は僕も就職していたことがあって働きながらアートワークをやっていたんですけど、その時は本当にきつくて仕事もあるし、やりたいこともあるし。当時はもう本当に寝る時間を削って自分の好きなことをしていました。そうしたら本業の仕事の方がぐずぐずになってもうやめるしかないってなってしまいました(笑)。
ーそうだったんですね。好きなことに踏み出すことの難しさや怖さはありましたか。
就職するのか好きなことをするのかどうかってところって、やっぱりこの先怖いなっていうのがあると思うんですよ。好きなことをやって暮らすことってその時は未知なことだし、一歩を踏み出すって尋常じゃない想いがあると思っています。僕は30歳手前までにアーティストとして花が咲かなかったら諦めて働こうと決めていて期日を決めたからこそ、どうやったらそこにたどり着けるかを逆算しながら動いていました。結構大きなことを宣言して何かになっていなかったらやめるっていう、ユーチューバーじゃないですけどチャンネル登録者が100万人行かなかったら芸人やめますみたいなノリでした(笑)。
ー迷いなどはなかったのでしょうか。
お世話になってる人で音楽を作っている方がいて相談した時に、「最初からやめるっていうくらいならやるな」と言われて、「いや、そうだよな」と思って気持ちが切り替わりました。すごい響いたというか、自分の意思がはっきりしたというか。ただ、それでも30歳手前では踏ん切りをつけようかなとは思っていましたね。それくらい一歩を踏み出すことは難しいのかなと思います。
ーその後アーティストとして活動していく決心につながった分岐点はありますか。
実は30歳手前で大賞みたいなものをいただいたんです。ミュージックイラストレーションアワーズ(レコジャケ展)って毎年開催されているものがあるんですけど、そこに出た時にスポンサーをされている会社さんの賞をいただいたんです。それがおそらく28歳の時だったんですよ。レコジャケ展は毎年観に行っていたこともあって知ってはいました。ある時、友達と飲んで遊んでいたら別の友達に呼ばれて合流したらそこにたまたまレコジャケ展の主催の方がいらっしゃって、その場で挨拶をして「レコジャケ展に出展したいです」って伝えたんです。その時は「絶対大賞を獲るぞ」って狙っていたし、これを逃したらやばいみたいに友達にも公言とかしていました。それで初出展で賞をいただけたんですけど、獲れた時はもう本当に叫びました(笑)。
ーSUGIさんの作品への想いはもちろん、人との出会いが大きなターニングポイントになっていると感じたんですが、それについて何か心がけていることはありますか。
いろいろな人がいて絵を描けるのは当たり前、かっこいいものを作るれるのも当たり前で、それこそ作品を観てくれる人がいることが大前提なので、そのための宣伝じゃないですけどちょっとずつ一人で緊張しながらもそういった展示の場所に行ってみたりとかそういったコミュティーに顔をだしてみたりしていました。やっぱりちょっと緊張とか恥ずかしさもありましたけど、本当にやりたいという想いが先行していたので、それは後々関係ないし、いらないものだなと思って一歩踏み出すじゃないですけど、僕はそうしていました。
ーありがとうございます。次に活動の原動力について教えてください。
原動力は音楽をやっている仲間と一緒に遊びたいというのが初期衝動だったんですけど、その子達がどんどん自分達の音楽でのし上がっていくのを見てめっちゃかっこいいなと思って。自分もその場所に行きたいという想いから、その場所に行くにはどうしたらいいんだろうって考えていろんな経験をしました。最初の頃に僕からすれば達人みたいな人達の中にいさせてもらうことがあったのですが、当時僕はヘマをしまっくって本当に何もできなくて少し気が病んでしまって。その場所から少し離れて友達と色々やってみたんですけど、そこにもその道の達人みたいな人はいるし、その人達と一緒に仕事をしたいという想いが一層強くなって、その人の背中に追いつけ追い越せじゃないですけど、それが原動力ですね。
ー友達や憧れる先輩の存在って大きいですよね。SUGIさんが憧れる方に共通する要素はありますか。
めっちゃざっくりで、でもこれでしか言い表せないんですけど本当に”本物”というか。もともと映画とか漫画とか作品を見ることが好きで、いざそういうものを作っている現場に足を踏み入れると冗談もなければ本当に本気で、当時ちゃらんぽらんだった僕は姿勢を正されました。なんかやっぱり好きなことだったり、自分のやってることを一生懸命突き詰めてる人達なので出す作品もそうだし、生き方もそうなんですよね。誠実だしかっこいい大人っていうんですかね。本当に頭あがんないなと思っていたし、いずれは自分もそうなりたいです。
本当に突き詰めている人達ってそこに嘘はないし、本当にストイックだなと思います。僕もまだ若い方ですけど、もっと若い時はしびれましたし、こんな知らないカルチャーだったり、面白いものがあるんだっていうところですごいかっこいいと思っていました。たまたまそういう人たちが周りにいたのがラッキーだったなって。それに尽きます。
ー目標であったり、こうなりたいという強い想いが原動力になっているんですね。ちなみに今の目標はなんですか。
ありがたいことに与えられた場所だったり仕事をいただけてこれまでの僕のキャパシティーが常に更新していくので、それに対してどうやって今の自分の力以上のものを出せるかということだと思っています。それをこなしていくって感じですね。
ーそのために心がけていることはありますか。
流行りのものだったり周りの環境だったり、今の自分の現状を知っておくことは心がけています。僕は流行は作品に取り入れはしないんですけど、流行は流行として知っておくというか。表現自体をそれには寄せないんですけど、もし自分が流行を意図せず作ってしまったら、それは流行のものになっちゃうのでそれを引いて客観的に見てみるというか。流行を出さずに自分の色をいかに出すかっていうことだと思います。
ーこれから先してみたいことを教えてください。
やっぱり日本もそうですけど、海外でも僕の作品をみてもらいたいです。ありがたいことに海外やいろんな場所で活躍する絵描きの先輩方のお話を聞くことがあるんですけどやっぱり僕もその場所に行きたいし、もっと上に行ければと思っています。後々は海外に住んでそこで絵を描きたいなっていうのもありますね。実は去年ニューヨークに行った時に、当時は本当にお金がなくて観光地にも行けず、できることといったら絵を描くことくらいしかなくてメモ帳に絵を描いていたんですけど、歩いている人も違うし街の雰囲気も違うし、ただ描くことがすごい楽しくて。
ー海外で絵を描いてみて表現したいものが変わったりしたのでしょうか。
ずっと表現したいものは変わっていくと思います。それを決めて、これがスタイルですっていうのは決めずにどんどん変えるようにしたくて。表現するものを固めることでストレスを感じたくないので。あくまでその時に描きたいと思ったものを描いていきたいです。
ー今後どのようなアーティストになっていきたいか目標を教えてください。
ずっと友達と絵を通して遊んでいたいし、周りの環境が変わっていったりキャリアアップだったりということはあると思うんですけど、僕自身はアーティストとしての初期衝動を変わらず持ち続けながらずっとやっていきたいですね。ずっとアーティストとしての想いは変わらずにでも作品は少しずつは変わっていくみたいな。
ー絵を描く活動とはSUGIさんにとってどのようなことでしょうか。
絵を描くことはできれば死ぬまでやるライフワークとしてやりたいなと思っています。ずっと自分の表現したいことを好き勝手描けばいいんですけどやっぱり自分も社会で生きているので、どれだけ自分なりに社会の問題に対し、表現を通してアプローチできるのかということは常に考えています。表現の内容として、破天荒なことをしてもいいとは言っても、すぐ隣には社会があるということを意識してやっていきたいです。
ーありがとうございます。最後に今回The Youth Storeに出展してくださっている絵に込めた想いやテーマを教えてください。
そうですね。テーマでいうと何だろう(笑)。アボカドの作品があるんですけど最近タコスを食べるんですよ。一回作って楽しくなっちゃって、アボカドのワカモレとか美味しいじゃないですか。それでアボカド書こうと思って(笑)。生活の中、自分の家の周りというか身の回りというか、今回はテーマをガシッと決めて描いたというよりかも、状況も状況で家にいる時間も多いと思うので家に飾っていただいて重たくないようなイメージで描いてみました。ただ家にいても気分が晴れるような色ということで緑しばりかもしれないです(笑)。
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いろんな場所で出会う、ついかっこいいなと思ってしまう大人や同世代の仲間たち。
そんな彼らも最初は憧れる人達の背中を追いかけて、初めの一歩を踏み出していたのかもしれません。
どのお話のどんな部分がみなさんの心に残っているのでしょうか。
友達との切磋琢磨や生き方そのものを尊敬したいと思える先輩との出会い、そして好きな絵を描くことを通して人とのコミュニケーションをとろうとする彼の姿勢から、もしかしたら一歩を踏み出すヒントを見つけることができたのではないでしょうか。
学校での勉強も友達との遊びも、日々の仕事やアルバイトだって、まずは目の前のことに本気で取り組んでみる。
意外にもそんなところから自分の本当の”好き”を見つけられたり、誰かにかっこいいと思われる大人へと、一歩づつ近づけるのかもしれません。