Ryohei Obama

東京からニューヨーク、ロサンゼルスへと海外へも活躍の場を広げ続ける若き写真家Ryohei Obamaの原点。

 

 

「アーティスト」って言葉を聞くと、どこか少し違う世界を生きている人のように感じてしまう。
それでも、彼らも同じ”今”という時代を共に生きる仲間のひとり。
多くの選択肢が目の前に広がり本当の好きを見つけにくいこの時代に、
一足早く自分の道を見つけ、「好き」を体現し続ける彼の活動の背景にあるものとは。
同じ時代を生きる、同世代のアーティストだからこそ、私たちが共感する、生きた言葉がそこにある。

東京を拠点にニューヨークやロサンゼルスなど、海外へも活躍の場を広げる若き写真家Ryohei Obama。

自分の好きな世界観を写真で表現することに誠実に向き合いラフに行動する姿勢や、若くして活躍の場を海外にまで広げた彼の言葉から、自分らしい生き方を見つけるヒントを探ってみる。

 

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【Profile】

Ryohei Obama(小濵 龍平)
東京を拠点に活動する写真家。
ファッション写真を中心に、アーティスト写真やライブ・イベントの撮影など様々な分野で活躍。
また、ニューヨークやロサンゼルスといった海外でも、人や街を中心としたストリートシーンの撮影を積極的に行なっている。
2019年には、ニューヨークキッズのありのままをフィルムで切り取った写真展、KIDS OF THE STREET -NEW YORK-を開催した。

Instagram of Ryohei Obama

Collections of Ryohei Obama

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現在は東京で活動されているんですか? 

メインは東京です。でも本当はニューヨークのアーティストビザを取りたくて。
履歴や経歴がないと申請しても通らないので、今はこの場所で経験を積んでいます。


写真を始めたきっかけを教えてください。

『STREET』というファッションスナップ雑誌を知ってますか?あれが昔からめちゃめちゃ好きで。
初めて読んだのが高校生くらいの時で、当時はまだスナップ写真を撮っている人について意識はしていなかったんですけど、とにかく「こんな世界があるんだ」ってすごい衝撃を受けて、、
僕の場合アメリカ映画が好きで、映画の予告編を作る会社に入ろうと考えてました。
大学では映画専攻の学科に入ってみたんですけど、いざ授業を受けてみたら扱うメインの映画が違うジャンルで、自分のやりたいことではないと感じていました。それでふと立ち返ってみた時に、自分は服も好きだなと思って。その時頭の中に浮かんできたのが、『STREET』という雑誌でした。『STREET』は、ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京の4都市を中心に出版されている雑誌なんですけど、ニューヨーク版のカメラマンが、後に僕がお世話になる筒井心一さん(以下「筒井さん」)という方に変わっていたんです。


この筒井さんという方はファッションスナップをずっと撮っていて、その写真がなんか今までのものより個人的にはすごい好きだった。それまで撮った人とか気にしたことはなかったんですけど、撮った人が分かってくると同じ日本人だし、どうやってこのスナップを撮っているんだろうって気になって。それで大学3年の夏に、筒井さんに直接「『STREET』を読んでいて写真もすごい好きで、よかったら一緒に写真を撮りながらニューヨークを連れ回してもらいたい」という旨の連絡をしたら、意外にも「いいですよ」って返事がきたんですよ。「ちょうど部屋空いてるから家に来ちゃえば」みたいな。それでお世話になって、初めて1人で海外に行くことになりました。友達とは行ったことがあるけど1人でっていうのは初めてで。


それで、年に2度開催されるファッションウィークの時期に合わせてニューヨークへ行ったんです。

ニューヨークの夏のファッションウィークは大体9月の1~2週目くらいに開催されるんですけど、僕は8月の初めから、もう大学そっちのけで2ヶ月から2ヶ月半くらい行っちゃって(笑)。

それまでは正直あんまり写真を撮ったことがなくて、ただフィルムカメラ一台を持ってひたすらに声をかけて写真を撮らせてもらう、みたいなだいぶ厚かましい行動をしていました(笑)。

 

 

ファッションウィークの開催前には、昔から憧れていたニューヨークの雰囲気を感じるため、近くのスケートパークに行って現地の人と一緒に滑ったり。そしたらいつの間にか友達もできて、連れ回してもらったり写真を撮らせてもらったりしていました。

ファッションウィークが始まって、筒井さんと一緒に写真を撮っていて、彼はスナップの写真なので、モデルとなる人の下から上まで全身を一枚で写すような撮り方をしていました。それも1日中。ファッションウィークの1週間から10日間、朝から晩までずっと撮っていました。『STREET』に載っているようなスナップのモデルって、だいたいファッションショーの前後のモデルさんだったり、自分が撮られたいと思って会場に足を運ぶニューヨークキッズなんです。その中から自分が好きな雰囲気の人を見つけて写真を撮ってるんですけど、僕がこれまでずっと見てきたものを目の前で撮影していて、「こんな感じなんだ」ってすごい感動して。

 

 

でも、筒井さんの横でずっと撮っているのも正直なんか申し訳なかったので、自分の好きなスタイルの人達をフィルムに収めたいと思い、途中からは様々な場所を移動して写真を撮りだしたんです。ただ僕はスナップ写真を撮ろうと思っていたわけではないんですよ。ニューヨークの街も好きだし、空気感とかも好きだし、そういった雰囲気も含めて自分がただかっこいいと思う人をポートレートでも後ろ姿でも、通りすがりでも声を掛けてのスナップでも、色んな角度から切り取って。それが楽しくて最初はひたすら撮ってました。その時は別に写真で食べていこうとか全く思っていませんでした。


アメリカ、特にニューヨークやロサンゼルスに興味をもったきっかけを教えてください。 

安直な理由で。小さい頃から海外といえばアメリカみたいなイメージがあって。なんか潜在意識かわからないんですけど。多分、僕の母親が仏像が好きで。全くアメリカとは真反対じゃないですか。和の真髄みたいな(笑)。 それで昔から、京都とか奈良とか、そういうところに連れていかれまくって。今だったら京都や奈良、金沢は風情があるって感じるんですけど、正直当時はときめかなかった。その反動かはわからないんですけど、アメリカにどんどん憧れるようになっていきました。

あとは、アメリカ映画。90年代のアメリカ映画がずっと好きで。マジで映画が好きで!高校2年生くらいから1日2~3本、大学2年生くらいまでずっと観てたんですよ。意味のわからない時間の使い方をしていたんですけど(笑)。 高校生の頃からアメリカのカルチャーに憧れてスケボーをしていたというのもあって、それでニューヨークとかロスに行くようになりました


海外に行かれる時はどのくらいの期間で行かれるのか教えてください。 

結構長めにいきますね。2~3ヶ月、ビザがギリギリの期間まで。

それまでは1週間とかの短い期間で旅行に行ってたんですけど、時間が限られてしまうとこの日はここに行く、この日はここで食べる、って頭の中で計画してしまって(笑)。そんな風に、縛られることがすごいイヤなので。予定を立てずに向こうで暮らしているような感じで、その日の気分でスケボーをしに行ったり、カメラを持たないで遊びに行ったり、パーティに行ったりみたいなスタイルが好きです。その当時は、現地に友達もいなかったので、それこそ長い期間行った方が絶対友達ってできるじゃないですか。友達をいっぱい作ろうと思って、長めの期間行ってました(笑)。

あと海外でいうと荷物が多いのがめちゃめちゃ苦手で、服も向こうで買うようにしています。だからスーツケースもパンパンにもならないくらいで行って、帰りパンパンみたいな 。今日もほとんど何も持っていなくて(笑)。フットワークがもともと軽い方でもないのに、荷物が多いともっと重くなっちゃうから、なるべく持たないようにしています。

 



海外での活動でご自身が変わったと思うところを教えてください。

初対面の人に対してガンガン話しかけられるようになりました。例えば、カメラを持たないで街に出てしまって自分の好きなスタイルの人がいた時に、連絡先だけ交換して後日に、写真を撮らせてもらったということがあります。日本では絶対話しかけられないけど(笑)。最初は躊躇があったんですけど、アメリカの人がフレンドリーだから。めちゃめちゃ話しやすいし、少し怖そうな人とかでも話しかけて、名前がオバマっていうことがわかると「え!オバマ!?嘘でしょ?」みたいな(笑)。

最初はこいつ、からかってるでしょみたいなに捉えられてしまって、怒られることも10回に1回くらいはあるんですけど、パスポートとか見せれば「マジじゃん!」ってなるんです。それで一気に仲良くなれるんですよ。日本では考えられないけど、、、なんかもうね、大統領ありがとうって(笑)。


活動の原動力を教えてください。

僕が好きでやっているという単なる自己満足みたいなものになっちゃうんですけど、初めてニューヨークに行って撮った写真をインスタに載せたら、「写真を展示してみないか」とお誘いをいただいて。次の年の1月にあるカフェを会場に、壁一面に僕がニューヨークで撮影した写真を貼らせてもらうことができたんです。

その時に、専用の用紙に印刷された生の写真を見る機会って、写真展に行くくらいしか正直無いなと感じたし、写真は大体100枚くらいでパネルのようなものに貼り付けてあってたんですけど、いざ生で見たら自分でも思わずかっこいいと思ってしまって。もちろんパソコンや携帯で見れるのもお手軽で良いし、僕も見ることが好きだからいいんですけど、実際に生で見る写真は本当にかっこいいなって思いました。

展示に来てくれた人から「この写真かっこいいです」って言ってもらえたり、「やっぱり生でみたほうがいいですね」という声も聞こえてきて、そう言ってもらえて僕自身も楽しいと感じたし、今年も絶対にアメリカに行こうと思いました。その時の展示に来てくれた人の中に、ブランドのルックだったり、 Webマガジンだったり、それこそ雑誌関係の方がいらっしゃって、その後の仕事に繋がるようになっていきました。

その当時僕はまだ大学生だったし、カメラもなんならコンパクトカメラ1つしか持っていませんでした。だけど、初めて自分の写真をみる人にとっては何のカメラで撮っているのか、ましてプロなのかどうかはわからない。それでも、撮影を頼んできてくれる人がいるから全力でやりたいという思いで、初めてお金をもらって仕事をして。そういう風にやっている間に写真自体がどんどん好きになって、もっと独学で勉強して、写真の技術を身につけて夏にもう1回写真を撮りに行きたいという思いが強くなりました。

 

 

半年後に再びニューヨークへ行ったのですが、ショーが終わった後に開かれる同世代のニューヨークキッズが集まるパーティーが毎日どこかしらであって、そういうところに誘ってもらい行くようになりました。パーティー会場には正直ショーよりも自分の撮りたいスタイルの人がたくさんいて。こういうのって観光へ行っても絶対に見れないし、現地のキッズがやってるパーティーなんか場所もわからないし、すごいアングラなところでやっていたり、人の家でやっていたりみたいな。そういう場所に行って、写真を撮っているうちに「めっちゃ楽しいわ」って感じて。結局なんかめっちゃ話がそれてしまったんですが、、

僕の活動の原動力、それは「たくさんの人に写真を見てほしい」という思いです。映画でみる、写真で見る、自分の目で直接見る、色々な見方があるけど、映像だと人によって注目する部分が違ってくると思うんです。写真だったら一枚で空気感を含めた全てが伝わるところが好きで、それがフィルムカメラをメインに活動している理由でもあるんですけど。その空気感込みの一枚。その写真を撮ってる人が一回しか見ることのできない、その一区切りの1枚を実際に紙にプリントして見てもらいたいんです。

それで「いいね」とか、「すげえじゃん」とか言ってもらえたら本当に嬉しい。だから僕の活動の原動力は、自分の自己満足と、ぼくの写真を実際に見て面白いって思ってもらいたい気持ちです。

 

Obamaさんが写真を通して表現したいものは?

さっきも言ったことの繰り返しにはなってしまうんですけど、僕は映画を見ることが好きで映像から入ったんですけど、映像だと目に止まるワンカット、ワンカットって人によってそれぞれ異なってくると思って、見せたいものをそのまま見せることが出来るのが写真だと思うんですよ。

日本でもアメリカでも、どこにいても同じなんですけど、その都市と一緒に切り取る人や風景、自分の惹かれるものを手軽に表現できる手段が僕は映像よりも写真だった。

写真の中でもデジタルも楽しいんですけど、フィルムの方が1枚1枚を大事にできるというか、本当に見た瞬間一枚。デジタルで撮ると動画みたいに連続してしまうし、その中から一枚を選ぶことも苦手なので。フィルムカメラだったら良くも悪くも一枚だから。

写真といってもその場所の雰囲気とか風景とかそこにいる人とか、それら全部を閉じ込めたワンカットの一枚という写真が好きですね。



今後やりたいことを教えてください。 

1番やりたいことはロサンゼルスからアメリカ一周、ロードトリップをしながら会う人を撮ったり、風景をとったり、自分が好きなもの撮りたいです。それを本当は今年しようと思っていたんですけど、できるかわかんない状況になってしまって。

だから、それを来年とか、いつになるかわからないですけど、絶対やりたい。その撮ったものを個展のような形でまた展示して色んな人に見てもらえたら 、それが自分の好きな生き方で、お金は後からついてきてくれればいいなくらいの感じです。




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普段、少し遠い存在に感じてしまうことのある「アーティスト」。

20代前半にして東京、ロサンゼルス、そしてニューヨークへと足を運び、自分の見た景色を写真を通して表現し続ける写真家Ryohei Obamaの、そのストレートで飾らない多くの言葉に私たちはたくさんの勇気をもらえたのではないでしょうか。

少し視点を変えてみると、実は私たち一人一人がそれぞれの考えや想いを何かを通して世の中に発信していく、「アーティスト」なのかもしれません。

沢山の情報で溢れ、すぐに物事の正解を見つけようとしてしまうことが多くなってきた現代。そんな中でも結果を気にせず、ただ自分を信じて、好きなことや興味のあることに、まずは飛び込んでみようとする勇気こそが私たち若者の特権なのかもしれません。

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