Biblio for the youth Vol.2

何かを受けたり渡したりだけの関係ではなく、やっぱりこれはあいつに頼もうかなと思われる方が信頼って生まれると思います。

 

「本が、その悩みにこたえてくれるよ。本には大抵のことが書いてあるから。」そう仰るのはかもめブックスの店主である柳下恭平氏。就活、仕事、恋愛、人間関係、ライフスタイルまで、生きていれば色んな悩みを抱えるもの。そんなあなたの悩みを"知のドワーフ"こと、柳下恭平氏がユーモアあるアドバイスと一冊の本で解決します。あなたのその悩み、知のドワーフにぶつけてみませんか?きっとあなたにとって素敵な本に出合えるはず。

――――――――――

柳下恭平/ かもめブックス

かもめブックス代表、柳下恭平。1976年生まれ。 10代後半から20代前半にかけて世界を放浪。世界中を放浪し、さまざまな職種を経験後、出版業界で働く。28歳の時に校正・校閲を専門とする会社、株式会社鴎来堂(おうらいどう)を設立。2014年末には、神楽坂に書店「かもめブックス」を開店する。出版業界のほぼ全域に関わり、「〆切の妖精」と「知のドワーフ」の愛称で親しまれる。

Instagram

Webpage of KAMOME BOOKS

――――――――――

「若者と世界を繋ぐ」をミッションに掲げ、まだ見ぬ世界や生き方を提案するライフスタイルブランドThe Youthと、東京は神楽坂に店舗を構えるかもめブックスの店主、柳下恭平氏がお送りする連載企画。

就活、仕事、恋愛、人間関係、ライフスタイルまで、生きていれば色んな悩みを抱えるもの。そんなあなたの悩みを本屋さんと一緒にBiblio(=本)でお答えしていきます。今回は一体どんなお悩みが集まったのでしょうか。

”Biblio for the youth”へようこそ。

(お悩み No.4:リュウ 27歳男性)人と比較して常に劣等感を抱いてしまい、その劣等感から幸福度が低くなっていると感じています。自分の人生を人のものと比べず、自分がやりたい事にフォーカスして生きていく方がより良い人生を歩めるとは分かっているのですが、SNSなど他人の人生を垣間見る機会が多い現代において、自分にフォーカスすることは凄く難しいことだと日々感じます。なにかいいアドバイスがあればお聞きしたいです。

柳下恭平(以下、柳下):ありがとうございます。これを頂いて、思ったのが……いまこれ見えます?(画面に大きくヒビが入り、カメラ部分上部が剥がれているiPhoneを見せながら)

進行・三浦思聞(以下、シモン):あ、見えます見えます(笑)。

柳下:最近これが壊れるのが楽しみなんですよ。このiPhoneが壊れたらスマートフォンをやめようかなと思いまして。

シモン:え。なんでですか?(笑)

柳下:いや、SNSが最近邪魔だな~と感じていて。スマートフォンを持っていなくて困るのが唯一インスタだと思うんですよね。インスタの投稿って唯一スマートフォンからでしかできないじゃないですか。インスタの更新に困るぐらいであとはたぶんほとんど困らないですね。最近あんまりSNSを使ってないなってことに気付いて。もっと言うとぼく、基本一日に一冊は本を読むんですけど、結構本を読む時間を取られるなと率直に思ってですね。

一日にインターネットの時間を結構きちんと区切っていて、スマホを作ったスティーブ・ジョブスという方がいるじゃないですか。で、スティーブ・ジョブスが子供に与えたくなかったものがいくつかあるんですけど、そのうちの一つがiPhoneなんですよ。なんかほっとくとニュース見ちゃったり、LINEを見ちゃったり……あ、違う違う。これ本を紹介するんだ! ちょっと待ってくださいね、本を取ってきます。

シモン:(笑)

柳下:今回リュウさんに紹介したい本はこちら。『ベルリンうわの空』という漫画ですね。ベルリンの生活について描いている漫画です。で、もうちょっと言うと、ぼくが今一番行きたい都市のひとつがベルリンで、ヨーロッパの中で変化が一番先に来るんではないかと思っている場所です。景気だったり、道徳観だったり、リベラルの人が暮らしやすい街かどうかというのが出やすい街だなと思っています。ベルリンに「躓きの石」というものがありまして、これ何かって言うとナチスがその建物に住んでいたユダヤ人を連れ去っていった記録を残してるんですよ。ベルリンの街を歩いていると点々とこの石が埋まっているんです。なんかハッとするんですよ、「ここにもこの石があるんだ!」と。ナチスはとても不幸な事件として記憶されていて。戦後のドイツがどういう教育をしたかというと、クラスに50人いて、自分以外の49人が”A”と言っていても、自分が”B”だと思ったらはっきり”B”と言わせる教育をしてるんですよ。

シモン:そうなんですね、初めて知りました。

柳下:周りに同調してないわけではないんですよ。周りに同調することもすごく大事なんですけど、自分の言いたいことをまず認識して、言語化して、どんなにアウェイでも言えるようにする。っていうことを身に着けた国民性なんですね。素晴らしい教育だと思うんですけど、頭の方に書いてあったリュウさんのお悩み。「人と比較してしまい劣等感を持ってしまう」。これは別に悪いことではないと思っていて、ある程度当たり前のことだと思うんですよ。自分が出来ることと出来ないことがあるってことは当たり前で。なので、是非この本を読んで、それだけじゃないカルチャーもあるんだなと感じ取って頂けたら嬉しいです。

シモン:僕の場合は劣等感があるからこそ、それをバネに頑張れる部分はあるのかなと思いつつも、自分自身の意見や価値観も、周りに存在している価値観と同等のものの一つであるということを思えれば少し楽になるのかなと思いました。ただジョブズのお話じゃないですけどスマートフォンをもつという同調圧力に対して「No」って言えるとめちゃめちゃ幸福度上がりそうですね。

 
香山哲『ベルリンうわの空』、イースト・プレス、2020年

(お悩み No.5:買い物は絶対成城石井さん 25歳女性)人と会話をしているときに自然と上から目線なもの言いをしてしまうことがあります。さらにわたしは感情が顔に出にくいタイプなので、上から目線なもの言いと相まって怖がられたり、人を傷つけてしまうことが度々あります。会話中、意識はしているつもりなのですが、どこかで人を傷つけている気がしてよく不安になります。

柳下:まず、ペンネームで笑わせてくれるの素晴らしいですよね(笑)。成城石井の500円くらいで買える白菜が入った豚しゃぶがあるんですけど知ってます?電子レンジに放り込んでボタンを押すだけで豚しゃぶが食べられるという夢のようなセットがあるんですけど、それ最高に美味しいのでおすすめです。

シモン:ぼくはよく渋谷の郵便局の隣にある成城石井で乾燥マンゴーを買って代々木公園で食べる活動をしてました(笑)。

柳下:分かる~。あの乾燥マンゴーも美味しいよねー。あとプリンねプリン。

シモン:あ、あのプリンも美味しいですよね(笑)。

柳下:この方は上から目線の物言いで人を怖がらせてるんですかね?言葉そのものが尖っているとか。ん、上から目線ってなんだ? 成城石井が上から目線なのかな?(笑)ハナマサ行くべきなんですかね?

シモン:そこなんですかね(笑)。一回成城石井を忘れましょう(笑)。

柳下:成城石井に引っ張られてるな。とりあえず、本を持ってきますね。

 

柳下:『櫻の園』吉田秋生著(白泉社)という本です。全部で4章ありまして、群像劇なので主人公が4人いるわけですよ。4人目の主人公が、背の高い女の子で、周りからちょっと距離を置かれている。言ってることは正しいけれど、ちょっととっつきにくいよね。と言われているキャラクターが4人目の主人公なんですね。作中でですね、なんかやっぱり自分が思っているように周りから見られていないというギャップに悩んでいるシーンがあるんですよ。顔の筋肉を鍛えてニコニコするとか、上から目線の物言いをやめるとか、別にそういうことではなくてですね、根っこのところはそれどころじゃない気がしててですね、大事なのはそのギャップをどう埋めるかな気がします。あまりここで喋りすぎるとネタばれになってしまうので敢えて話しませんが、1994年に書かれた本なので今とは時代感とか倫理感とか、セクシュアリティ感とか全然違うんですけど、なんか、悩みそのものは普遍的だなと思わせる本でもありますね。

シモン: ギャップ問題は難しいですね。ギャップって自分が思っているイメージと相手が思い描いている自分(私)のイメージの間に生まれるものだと思うんですけど、場合によってはそこって無理に埋めるものでもない気もするし、埋める必要がある場合でも、その人との付き合い方によってギャップを見せる見せないを決めるのもありだと思うし、難しいですよね。ただ僕自身もギャップ問題について関心があるので、吉田秋生『櫻の園』を読んでみようと思います!!

吉田秋生『櫻の園』、白泉社、1994年

(お悩み No.6:せごどんさん 26歳男性)人からのお願いを断れないのが悩みです。いつも人から頼まれることは基本的に引き受けてしまいます。自分の時間をつくりたいにもかかわらず、主に仕事場で自分を酷使してしまい、後々後悔することが頻繁にあります。人の信頼を得るためにやっていると自分では思っているのですが、自分を犠牲にしてまですることなのでしょうか。少しでも断れる勇気が出ればもっと楽に生きられるのになと感じています。アドバイスの程宜しくお願いします。

柳下:なるほど~、分かりました。それではそれに対して思うことをシモンくんに繋いでいただいて、その間に本を取ってきますね。

シモン:せごどんさんにすごく親近感と言うか、よくぞ聞いてくれた!という悩みですね。ぼくも信頼のために断れないことがあるので、柳下さんがどんな本を持ってきてくださるのかすごく楽しみです。なかなか断れないですよね~。

柳下:よし、今回おすすめする本は『SLAM DUNK』井上雄彦著(集英社)です。

シモン:あっ!!!ぼく、全巻家にあります。最高です。

柳下:名作ですよね~。ぼくもですね、友達と同じようなお話しをしたんですよ。人からのお願いって断れないよね~と。その友達が言ってたことなんですけど、ぼくは優しいのでこんなことは言わないんですが、要するに頼まれやすいということはその人にしかできないことがないんじゃないかと。一回落ち着いて聞いてね、ぼくはそんな風に思ってないよ(笑)

柳下質問者の方が何もできないというわけではないんですよ絶対。なんでスラムダンクかっていう話をすると、スラムダンクに出てくるキャラクターにたぶん簡単に頼みごとを出来ないと思うんです。例えば主人公の桜木花道にコーラ買ってきてって言えないと思うんですよ。それはただこの人が狂暴だからとかそういう話ではなくて、スケットマン桜木にコーラを買ってきてと言えないと思うんですよねなんか。

シモン:たしかに……

柳下:別にせごどんさんの人格を無視してるわけではないですよ。で、やっぱりユニークなことってどんどん頼まれることじゃないと思うんですよね。せごどんさんと言えば、何でもいいんですよ。包丁さばきの技術が凄くあるとか、エクセルの技術がすごいとか。何でもいいんですけど、せごどんさんの中のプロフェッショナルや熟練のものがあれば、なんでもかんでも頼まれることってなくなっていくと思います。なにかを頼むとか頼まれるとかであんまり信頼って生まれないと思っていて。いや信頼は生まれるけど、甘えも生まれるので。何かを受けたり渡したりだけの関係ではなく、やっぱりこれはあいつに頼もうかなと思われる方が信頼は生まれると思います。なのでそれをこの名著of名著から学んで頂ければなと思います。もうね、31巻とかね、文章が無いシーンが続くんですけど、涙出てきますよね。(笑)どうやったら断ることができるかという方法を考えることも大事なんですけども、何かのエキスパート、ちっちゃいことでもいいんですよ。

シモン:たしかに。例えば、彦一ってキャラクターいるじゃないですか?彼はどんな情報も集めてくるやつなんですけど、彼も小さいことのエキスパートですよね。こいつならどんな情報も集めてきてくれるだろうっていう信頼が生まれるというか。なにか小さいことでもエキスパートになってみることが大事なことな気がします。

井上雄彦『SLAM DUNK』、集英社、1996年

――――――――――

最後まで読んで頂きありがとうございます。
いまあなたの中でどんな言葉が引っかかっているでしょうか。 

生きていればうれしいことはたくさんある。
でもつらいこともあったりする。

“Biblio for the youth”では就活、仕事、恋愛、人間関係、ライフスタイル、日常生活にありふれた疑問やあなたのまわりにいる人には話しづらいパーソナルなことまで、どんなお悩みにも街の本屋さんと、本をもって解決します。 

お悩みは随時募集しています。The YouthのInstagramからDM、もしくは下記のフォームからお悩みを募集していますので、是非ご応募お待ちしております!