Biblio for the youth Vol.1

あの、人生って有限なので、ちゃんと関係性の持った人に自分の言葉が通じればそれで実はいいんです。

「本が、その悩みにこたえてくれるよ。本には大抵のことが書いてあるから。」そう仰るのはかもめブックスの店主である柳下恭平氏。就活、仕事、恋愛、人間関係、ライフスタイルまで、生きていれば色んな悩みを抱えるもの。そんなあなたの悩みを"知のドワーフ"こと、柳下恭平氏がユーモアあるアドバイスと一冊の本で解決します。あなたのその悩み、知のドワーフにぶつけてみませんか?きっとあなたにとって素敵な本に出合えるはず。

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柳下恭平/ かもめブックス

かもめブックス代表、柳下恭平。1976年生まれ。 10代後半から20代前半にかけて世界を放浪。世界中を放浪し、さまざまな職種を経験後、出版業界で働く。28歳の時に校正・校閲を専門とする会社、株式会社鴎来堂(おうらいどう)を設立。2014年末には、神楽坂に書店「かもめブックス」を開店する。出版業界のほぼ全域に関わり、「〆切の妖精」と「知のドワーフ」の愛称で親しまれる。

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「若者と世界を繋ぐ」をミッションに掲げ、まだ見ぬ世界や生き方を提案するライフスタイルブランドThe Youthと、東京は神楽坂に店舗を構えるかもめブックスの店主、柳下恭平氏がお送りする連載企画。

就活、仕事、恋愛、人間関係、ライフスタイルまで、生きていれば色んな悩みを抱えるもの。そんなあなたの悩みを本屋さんと一緒にBiblio(=本)でお答えしていきます。今回は一体どんなお悩みが集まったのでしょうか。

”Biblio for the youth”へようこそ。

司会・佐藤岳歩(以下、ガク):今日は新連載企画、”Biblio for the youth”です!

柳下恭平(以下、柳下):ほう、”Biblio for the youth”。

ガク:はい、Biblio(ビブリオ)です!

柳下:本のことですね。

ガク:もしかしたら柳下さんとビブリオと聞いて、あれ。っと思う方もいるかもしれないのですが、以前NEUT Magazineさんの連載記事でやられていたビブリオ人生相談を、わたしたちThe Youthがリアルタイムのライブ配信というかたちで、色んなユースたちの悩みに本をもって相談に答えていく。そう、それが”Biblio for the youth” です。

柳下:なんでそんな爽やかに「そう、それがBiblio for the youth”です。」なんて言えるの?(笑)

ガク:改めてそんなこと言われると恥ずかしくなっちゃいますよ(笑)。

柳下:悩みを頂いて、その悩みにぼくが答えるんじゃなくて、本で答えるっていうのがこの企画の主旨ですよね。で、今回は第一回目なので悩みを公募ではなくThe Youthのメンバーであるガクくんとヒロくんがぼくにぶつけてくれると。それに2つ答えていこうじゃないかと。そういうことですね?分かりやすい!

ガク:はい、そうなんです。今日は順番にぼくたちが抱えているリアルな悩みを相談させて頂きます!

柳下:はい!よろしくお願いします!

ガク:では早速ですけれども、ぼくの悩み相談からお願いします。

柳下:はい、楽しみだな~。爽やかだな~(笑)。

ガク:ぼくの悩みはですね……

(お悩み No.1:ガク 22歳男性)"何か新しいことに取り組む際、何でも自分でやり切ろうとしてしまうがあまり、結果的に自分自身の負担が大きくなって辛くなってしまうことがあります。(よく言えば責任感が強い、とも言えるかもしれないのですが。) 頭の中では周囲に任せきることで互いに責任感が芽生え、成長し合えるとは分かっているものの、いざ行動に移そうとするとどうしても自分の中で歯止めがかかってしまいます。 一体私はどうすればよいのでしょうか。"

柳下:なるほど。それは「誰かに助けを求めることができない」という悩み?それとも、「そもそも助けを求めた方がいいのか」という悩み?

ガク:えーっと、前者に近いですかね。ただ、助けを求めるというかは助けを求めたいと思う前に、あ、自分でやり切れば解決しちゃうなって思っちゃうんですよね。でもそれって任せるなら任せきった方がその人のためにもなるし、自分も自分のやっていることに全力を注げると分かってはいるんですけど、いろいろと抱え込んじゃうというか。

柳下:なるほど。分かりました、ちょっと本を一冊選んできますね。ちょっとお待ちくださいね。

柳下:今回ガクくんに紹介する本は『独り居の日記【新装版】』メイ・サートン著(みすず書房)という本ですね。日記文学です。彼女はセクシュアリティでいうとレズビアンで、1950年代くらいのアメリカでまあまあセンセーショナルな小説を書いたという過去もあるんですが…… まずですね、残念な話をすると、ガクくんはね、もう、ダメ(笑)。

ガク:(笑)(笑)

柳下:ダメっていうか、チームを作るって主に3種類しかなくて、1つは同等のパートナーで頼り合う、補完し合うっていうのがあって。まあそれを除くと、教育するか、甘えるかの主に2つなんですよ。で、ガクくんは甘え下手なんじゃないかと思います。

ガク:なるほど。

柳下:で、教育って意外と教師の才能が必要で。誰にでも教えるのが上手いって実はあまりいなくて。テクニックとかメソッドを体系化するっていうのが結構大事なんですけど、どれをどの段階まで進んでいるのかを教えるのが教師の才能なんですよ。それが意外と難しい。難しいというか、才能なんですよ。苦手な人は苦手だし、得意な人は得意。で、相性があって、どんなに優れたティーチャーでもスチューデントが必要なんですよ。しかも相性が良いスチューデントが必要で、だから優れた教師と優れた生徒のコンビネーションが必要で。で、ガクくんは、まだ会ったのも数回だし、がっつり飲んだこともないからこんなこと言うのもあれなんだけど、良い生徒の才能がない人なのかもしれない(笑)。ごめんね、こんなこと言って。違かったら言ってね(笑)。

ガク:いやいや、大丈夫です!(笑)

柳下:反論あったら言ってね。自分で自分を殴るから(笑)。あの、別に良い生徒のセンスが無くてもダメではないんですよ。ただ、うお座に生まれた人は他の星座になれないことと一緒で、良い生徒ではない星に生まれたようなもんで。チームを作るときって色んなチームの作り方があるんですけど、基本的に甘えるのが下手で、教える、教わるのが下手だと、もう無理なんですよ。だから、ガクくんはそのままでいい。

ガク:なるほど……

柳下:で、こちら。『独り居の日記【新装版】』という本は、彼女が50~70代くらいまでずっと日記を書いていたんですけど、これはセクシュアリティとかナショナリティとかがリベラルではなかった1950年代の本なんですけど、その時に彼女は独りで創作を続けるという選択をした人なんです。これがね、しみじみいいんですよ。ああ、先輩たちがこんな風に生きて、こうやって世界は切り拓かれてきたんだなという為になる一冊でもあって。だから、ガクくんは甘える、甘えられる、一回諦めよう(笑)。45歳とかになって、渋いおじさんになってさ、甘える甘えられるがちょっと出来るようになるかもしれないけど、いまは無理だよ(笑)。22歳でしょ、ぼく44歳だから半分だよ。こんなに爽やかで甘えられたらそれはずるいよ(笑)。その上で、このメイ・サートンさんがそれでも独りでやり続けるんだっていうモチベーションをこの本から学んでもらえたらいいなと思います。

ガク:ありがとうございます!甘え下手なぼくだからこそ、突っ走れるところはひとりでも突っ走れと。今のままでいいということですね。なるほど。読みます!というか、今日かもめブックスで買って帰ります!(笑)

メイ・サ―トン『独り居の日記【新装版】』、みすず書房、2016年

(お悩み No.2:ヒロ 26歳男性)"人前で話すのが得意ではありません。なぜ人前で話すのが得意ではないかというと、自分が伝えたいことを上手く伝えられている自信がないからです。海外生活が長かったことも関係しているのか、帰国してからは表現したい事を適切なボキャブラリーに落とし込んで説明することが出来ていないのではないかとよく不安になります。自分の思いを言葉で表現するのが苦手なせいか、普段もあまり喋る方ではなく、人とのコミュニケーションを取るのが億劫に感じる時もあります。柳下さんの記事などを拝読するたびに選ぶ言葉のチョイスや表現方法がすごく豊富で素敵だなと感じるのですが、ボキャブラリーや表現方法を豊かにするにはやはり本を読むことが一番の近道なのでしょうか?ご意見お聞かせください。"

柳下なるほど~、相談内容は「自分の言葉をきちんと伝えたい」。それとも「自分の言葉をきちんと伝えられない現状に困っている」?

山本拡俊(以下、ヒロ):「現状に困っている」の方ですね。

柳下:分かりました、ちょっと待ってくださいね。えーっと、こちら、『増補 日本語が亡びるとき』水村美苗著(ちくま文庫)という本のなかで、小説家や詩人が国際交流でアメリカやヨーロッパなど色んなところに集められて、合宿みたいな創作活動をする集まりがあるんですけど……

ヒロ:それは国際的にやってるんですか?

柳下:国際的にやっています。で、水村美苗さんご自身は中学生くらいまでずっとアメリカで育って、その時にすごい日本語を渇望していたんですよ。日本文学を渇望していて、例えば、夏目漱石がすごくお好きで、研究していたりもする方なんですけど、当時日本語に触れることが出来なくて、英語という世界共通語とローカル言語としての日本語について書かれた本です。これすごく面白くて、いまは世界の共通覇権語って英語なんですけど、ちょっと前まではドイツ語だったりとか、ラテン語だったりとかした時期があって、覇権言語とローカル言語について書かれた本です。で、さっきヒロくんの話を聞いていて思ったのが、本をいくら読んでも話って上手くならないんですよ。話を聞く事の対象が話すことなんですよね。で、文章を書く事の対象が文章を読むこと。なので本をいくら読んでも話すのは上手くならないんです。

ヒロ:書くことは上手くなるんですね。

柳下:上手くなります。なのである程度文章を書くことが上手くなりたいひとは本を読んだ方が良いと思います。だからコミュニケーションって瞬発力の問題なんです。例えば、テニスのラケットを持っていて、いまテニスのボールがこう来ているとかって考えないじゃないですか。気付いたら打ってるというか。それと一緒で会話ってラリーなので、たぶんいちいち考えないんですよね。だから、この本は文語、文章について読むこと、書く事について書いてある本なんですけど、なんかこう、喋ることについてもヒントがあるような気がしています。

ヒロ:なるほど。その、喋ることが苦手な人って聞く事も下手だったりするんですかね?

柳下:会話って基本3種類しかなくって、一つは自分と喋る。言い換えれば、自分で考え事をするですね。二つめに味方と喋る。最後に無関係の人と喋る。そこにバリエーションとして、異性と喋る、年上とか年下とか、違う言語のカルチャーの人とか、バリエーションはたくさんあるんですけど、基本的にはこの3つなんですよ。だから、恋人と喧嘩しているときのコミュニケーションと恋人と仲の良い時のコミュニケーションって絶対違うじゃないですか。

ヒロ:絶対違いますね。

柳下:だから恋人とどういう風にすればいいんだろうって自分と話すのは違うんですよ。ヒロくんがもし自分の言葉で喋れないとしたら、たぶんね、自分と話すのを得意になりすぎているか、そもそもなにかしらの関係性のある人と喋ることはほっといてもあるんですよ。でも無関係の人と喋ることって結構なくて、だからそこの訓練をすると他の会話も上手くいったりするんですよ。で、無関係の人と喋るときってコツがいくつかあるんですけど、例えば、好きな野球チームってある?って聞いたら中日ドラゴンズとか、絶対ガンバ大阪とは言わないじゃないですか。絶対野球チームを答えますよね。だから質問をするっていうアクションに対して、答えが来るっていうリアクションが返ってくるので、なので基本的な会話のコツって質問をすることだと思うんですね。で、無関係のひとに質問するのが一番難しいんですよ。天気の話くらいしかできないから。

ヒロ:それ一番苦手かもしれないです(笑)。

柳下:で、それに慣れてくるとどこでも喋れるようになるんですよ。ただ、意外にそれ得意になる必要もなくて。

ヒロ:あれ?

柳下:あの、人生って有限なので、ちゃんと関係性の持った人に自分の言葉が通じればそれで実はいいんです。

ヒロ:無理してそこを鍛えなくてもいいってことですね。

柳下:そうなんです。ホーキング博士ってご存じですか?宇宙物理学の。

ヒロ:はい、知ってます。

柳下:ホーキング博士って体の筋肉が収縮していく病気にかかっていたので喋れなかったんですよ。でも彼の会話をする際に使うコンピューターには4,500語くらいしか入っていなくて。でもその中には物理学専門用語の難しい言葉も入ってるんです。「このステーキ美味いね~」って言葉もあれば、「ブラックホールの重力はね……」みたいな言葉もあるわけです。だからホーキング博士が専門性のあるテクニカルタームも4,500語あれば喋ることができた。だからボキャブラリーの数とかって伝える上ではそんなに重要じゃないんです。むしろ楽しそうに喋ってるとか、こいつは仲間なんだなとか、そういう雰囲気を出す方が実は大事なんじゃないかなって思います。たぶんヒロくんはその雰囲気出せてるんじゃないかと思うな~。

ヒロ:あ、ほんとですか?そういってくださるならもうこれ、解決ですね(笑)。

柳下:話が戻りますけど、『日本語が亡びるとき』は言葉とはなにか、ボキャブラリーとはなにかについて書いてある本なので是非読んでみてください。

ヒロ:すごく気になります……伝える上ではボキャブラリー力って実はそんなに重要ではなくて、それよりも楽しい雰囲気を出せているとか、しっかり伝えようとする姿勢が重要ということですね。なんか少し気が楽になったような気がします。ありがとうございます!ぼくも今日この本を買って帰ろうかな(笑)。

水村美苗『増補 日本語が亡びるとき』、ちくま文庫、2015年

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最後まで読んで頂きありがとうございます。
いまあなたの中でどんな言葉が引っかかっているでしょうか。 

生きていればうれしいことはたくさんある。
でもつらいこともあったりする。

“Biblio for the youth”では就活、仕事、恋愛、人間関係、ライフスタイル、日常生活にありふれた疑問やあなたのまわりにいる人には話しづらいパーソナルなことまで、どんなお悩みにも街の本屋さんと、本をもって解決します。 

お悩みは随時募集しています。The YouthのInstagramからDM、もしくは下記のフォームからお悩みを募集していますので、是非ご応募お待ちしております!